ど素人の不動産屋チャレンジ:夢を掴むまでの全記録

ゼロから不動産のプロへ、夢を追いかけた私のリアルストーリー

【第二話】営業職への転身と新たな発見

僕は、ネットワークビジネスでそこそこの結果を出しながらも、依然として工場の事務職を続けていた。

工場の事務室は、毎日同じような光景が広がっていた。書類の山と、機械の音だけが響く無機質な空間。僕は、そこで毎日、書類と向き合いながら淡々と仕事をこなしていた。そんな単調な日々の中、唯一の変化が訪れる瞬間があった。それは、出入りするスーツ姿の営業マンたちが事務所の扉を開けるときだった。

彼らの姿は、どこか眩しかった。ピシッと決まったネクタイ、磨き上げられた靴、そして何より自信に満ちた表情。その姿は、僕にとって非日常の象徴のように見えた。いつの間にか、彼らに対する憧れが心の中で芽生え始めていた。

「自分もあんなふうに、スーツを着てネクタイを締めて、颯爽と歩けたら…」

その想いは、日に日に強くなっていった。工場の事務職を続ける自分に対する焦りと、営業マンとして新しい自分を見つけたいという希望。その狭間で揺れ動く心は、次第に一つの決断へと導かれていく。

【新たな挑戦】

「スーツにネクタイ、かっこいいなあ…」

そんな思いが心に広がる中、ついに僕は決断した。
単調な工場の事務仕事から抜け出し、営業職へと踏み出すことを決意したのだ。
そして、運命の扉を開いたのは、子供向けの教材を販売する会社だった。そこは、当時としては画期的な学習方法を提案していた。
電話越しに、愛らしい動物の先生が子供たちと一緒に学び、学習をサポートするという独創的なアイデアだった。その新しさに胸を躍らせながら、僕は営業マンとしての第一歩を踏み出した。

しかし、現実の壁は思った以上に厚かった。初めての営業職に挑む僕は、何度も壁にぶつかり、もがき続けた。どれだけ努力しても成果は上がらず、売り上げは低迷したまま。焦りと不安が募り、いつ首を切られてもおかしくない状況に追い込まれていた。

そんなある日、支店長が僕の肩を叩いて、静かに言った。「山下君、後1ヶ月だけ延長してみよう。本社に掛け合ってみるよ。」

その言葉は、沈みかけていた僕の心に光を差し込んだ。支店長の期待に応えたい、同僚の前で恥をかきたくない…その一心で、僕は全力を尽くし、懸命に動いた。そして、ついに初めての契約を勝ち取ることができたのだ。

それをきっかけに、成績は次々と上がり、やがて役職にも就くことができた。自信を取り戻した僕は、ますます営業の世界にのめり込んでいった。

そんなある日、あるお客さんがふとした質問を投げかけた。

「あなた、この教材を販売していくらになるの?」

その一言は、まるで鋭い刃のように僕の心に突き刺さった。

その瞬間、僕は立ち止まった。自分が本当に追い求めていたものは何だったのか。何のために働いているのか…。これまで見えなかった疑問が、急に目の前に現れ、僕はそれを無視することができなかった。

【新たな発見】

そのお客さんは、主婦として家庭を守りながら、僕の月収の倍を稼いでいるという。その事実を耳にした瞬間、僕の心は驚きと共に動揺した。

「実は、私も同じ教材の販売員なんです」と彼女は静かに語り始めた。「個人事業主としてある会社と契約して、教材を販売しています。完全歩合制なので、時間に縛られることなく、自由に働けるんですよ。どれだけ働くか、全ては自分の裁量次第なのです。」

その言葉が胸に深く響いた。僕は思わず心の中で繰り返した。「自由に働ける…自分の裁量で生きる…」

ふと、昔の自分を思い出した。ミュージシャンを夢見ていた頃も、営業職に憧れていた頃も、僕の心にはいつも一つの信念があった。「カッコよく生きたい」と。あの頃抱いていた夢と、彼女の言葉が重なり、忘れかけていた熱い想いが再び心の中に蘇った。

「これなら、自分の営業スキルを活かして、あの頃の夢を叶えられるかもしれない…」

その瞬間、僕の中で何かが弾けたような感覚があった。心の奥底でくすぶっていた情熱が、一気に燃え上がったのだ。彼女の話が僕に与えた影響は計り知れない。胸の中に新たな希望が芽生え、僕は再び挑戦する気持ちを取り戻した。

「これが僕の道かもしれない」

そう確信した時、未来が少しだけ明るく見えた。新たな挑戦が、僕の心に再び火を灯し、その光が今後の道を照らしてくれるように感じた。


山下昌也の物語は、夢を追い続けることの大切さと、新しい挑戦への勇気を教えてくれる。彼の人生は、まだまだ続いていくのだ。